1年の中でもっとも昼間が長くなる夏至から数えて11日目の日を『半夏生(はんげしょう)』といいます。
奈良県では『半夏生餅』を「はげっしょ餅」や「さなぶり餅」と呼んで、夏至から半夏生の時期に食べる風習があります。
その半夏生餅をご紹介させていただきます。
半夏生餅は奈良県の郷土料理
奈良県で郷土料理として親しまれている半夏生餅とは、いったいどんなものなのでしょうか?
半夏生餅とはどんなお餅?
半夏生餅は、つぶした小麦ともち米を半々の割合で混ぜ合わせてついた後、きな粉をまぶした『小麦餅』のことをいいます。
奈良県は「そうめん」で知られているように、小麦が人々の身近にあったことから、もち米に小麦を混ぜた小麦餅が食べられるようになったのでしょう。
つぶした小麦が混ざっているため、もち米だけでついた一般的なお餅に比べると粘り気が少なくて硬くなりにくく、小麦のツブツブした食感と香りが独特の味わいをかもしだします。
半夏生餅はなぜ半夏生に食べるの?
半夏生は7月2日ごろから七夕ごろまでの5日間を指します。
田植えの時期は「夏至のころ、半夏生まで」と言われて、農家の方々の作業の目安とされてきました。
田植えは半夏生までに終えないと、それ以降は田んぼにいくら豊富に水があったとしても、秋の収穫の量は半分になってしまうと言われて「半夏半作」や「半夏半農」という言葉もあるくらいです。
ですから、半夏生までに田植えを終えて、無事に終えたことを神様に感謝する意味で、半夏生餅をお供えして食べる習慣があったのです。
この奈良の風習は室町時代からあったと言われています。
さなぶり餅を販売する『総本家さなぶりや』さん
奈良で昔から親しまれている小麦餅、半夏生餅を『さなぶり餅』という名称で販売しているのが『総本家さなぶりや』さんです。
田植えが終わった後に、神様にお供えをして宴などをすることを「早苗饗(さなぶり)」ということから『さなぶり餅』と呼ばれるようになったと言われています。
そのほかにも、「さなぶり」の「さ」は田の神様を指します。
そして田植えが終わるのを見届けて、田の神様が天に帰ることを「さ昇り」と言いましたが、それが訛(なま)って「さなぶり」という音になったという言い伝えもあります。
南河内では『あかねこ餅』
半夏生餅は奈良のほかにも、南河内や北和歌山地方でも食されていたようです。
南河内地方では、収穫した小麦を皮ごと挽いていたため色が褐色で、作り終えたお餅の形が、丸まったときの猫の丸い背中に似ていたことから『あかねこ餅』と呼ばれてきました。
夏至のころに食べる半夏生餅は奈良では『はげっしょ餅』『さなぶり餅』と呼ばれ親しまれているの【まとめ】
半夏生と呼ばれる7月の初旬、ちょうどこのころに半夏生の花が咲きます。
半夏生の花は三白草とも呼ばれて、上から3枚目までの緑の葉の半分ほどが白色に変色します。
今ではあまり見られなくなり、奈良県では準絶滅危惧種に指定されています。
冬至の時期は柚子とカボチャを食べるのと同じように、夏至から半夏生のころにも地方によって食べられてきた夏至グルメがあるのですね。
またの機会に、半夏生餅以外の夏至グルメもご紹介したいと思います。
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